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イスカリオテ 2 [書籍感想]

個人的評価:★★★★☆(星四つ)


イスカリオテ〈2〉 (電撃文庫)

イスカリオテ〈2〉 (電撃文庫)

  • 作者: 三田 誠
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2009/03/10
  • メディア: 文庫



 「――本物なんて、どこにもないんですよ」

 偽者が語る想いの、一体何がニセモノですか?

 結局、今回のイザヤの悩みは、どう考えたところで答えなんて出るはずのない悩みですよね。
 自分が兄の偽者を演じること、それにすがる人々の希望や期待。
 かつて、兄を『食べて』しまったかもしれない少女、朱鷺藤玻璃の安堵。
 その全てを裏切っているという想い。
 『偽者』の自分ではなく『英雄』たる本物の九瀬諫也だったら、と思ってしまう自分。

 作中、自分が偽者であることを悩んでいるイザヤが、単なる劣等感ではない、厳然たる事実だ、と言ってますが、間違いなく単なる劣等感です。
 だってもう、『九瀬諫也』はどこにもいない。
 死んだものは生き返らない。二度と英雄になんてなれはしない。
 そんな、もういない『本物』だったらもっと上手くやれていた、という事実は、結局今を生きるイザヤ達には意味のないifでしかない。
 そんな悩み、答えなんて出るはずがない。
 そうして悩んでしまうのが、人間という生き物なのだけれど。

 だからでしょうか。
 ノウェムが呟く自分の名前を聞き、果てのない悩みを蹴り飛ばして咆哮を上げるイザヤの姿が、熱い熱い。


 それにしても、今回の<獣>は完っ璧に玻璃(獣)に食われてたなあ……(苦笑
 存在感からしてザコ、あるいは中ボス。いや、ラーフラとノウェムのコンビに完勝したりと、実力的には前回の<強欲>に勝るとも劣らないのだろうけども、格としてはどうしても小物だわ、こいつ。
 いや、単に玻璃(獣)の黒幕っぷりが異常なだけか。
 底が見えない、という一点だけでもこいつの恐ろしさがぷんぷん匂ってきます。
 っつーか、今分かってる情報から推察すると、明らかに九瀬諫也を喰らってるんですよね、こいつ。
 最後の最後で<獣>となって『九瀬諫也』が敵になる、という展開が非常に予想できて怖いのですが(汗

 あと、新登場ラーフラ君。
 なんだか順調に玻璃とのフラグが立ってる気がするのは気のせいですか?(苦笑
 大淫婦の方は異端なんてレベルじゃないんですがw
 まだ敵の敵なだけという感じの関係なラーフラが、今後どのような立ち位置についてくるのかが気になるところ。
 というか、巻頭カラーのダビデの説明で『聖人とみなすかは時代によって大きく異なる』とか書いてありますが、そんな聖人の断罪衣を着るラーフラが異端審問官というのは皮肉が利いてるなあ。

 いやまあ、それを言ったら一巻の時点から分かっている通り、英雄『九瀬諫也』が着、偽者のイザヤが手にした断罪衣が、聖人暦から除去された聖ゲオルギウスという辺りが筆頭なのだけれど。
 そういえば美術館での美術館での玻璃とのデートの際にもゲオルギウスの話が出たところで中断されてましたが、やっぱりあの美術館には飾ってなさそうなんですよねえ。

 本物と偽者をテーマにした物語の骨子とかは大好きで、間違いなくこれからも期待のシリーズです。
 続刊楽しみ。
 ただ、なんだかんだいって今回の話はクライマックスまでイザヤが悩み続けていてフラストレーション溜まったので、今度はもっともっと熱い話を期待したいなあ。
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