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プリンセス・ビター・マイ・スウィート [書籍感想]

個人的評価:★★★★☆ 星四つ


プリンセス・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)

プリンセス・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)

  • 作者: 森田 季節
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 文庫



 ――わたし以外にホレたら 許しませんからね。

 読了。
 帯に書いてある上記のセリフは作者が考えたのか、それともコピーライターか、編集部なのかな?
 この一言、酷く印象に残ってます。ラストまで読み終えた今では、なおさら。

 前作の「ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」と源流は変わらないのだけど、印象が大きく変わったのは作者の方が意図したものなのかな?
 丸くなった、というのが一番私の中でしっくりする表現な気がする。
 その変化は、良いもののようにも悪いもののようにも感じられるので、一概にどちらとは言えないのだけど。

 以下はどうしても前作「ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」と比べてどうだったか、という感想に終始します。
 予めいっときます、ごめんなさい。

 今回のヒロイン、畠山チャチャは前作の主人公、左女牛明美とタイプこそ似てるものの、多分読者からしてみるとこちらの方が好感度が高いんだろうなあ。
 個人的には明美の性格、女性ならそういう面もあるんじゃないの、という気もするんだが、あまりに現実的すぎるのか嫌い、という感想を結構見かけたし。
 その意見を見て、さらに参考にしたのかは分からないけれど、前作と同じく周りに毒を吐くところは共通してるけども、要所要所でオンナノコしてるので、随分刺々しい感じがなくなってる。
 物語の筋立ても、前作が正義と悪、または敵と味方とにはっきりと別れていたのに対して、誰かを思うが故に敵対するという形に変わっているし。
 まあ、これは前作と全く同じ展開にするわけにはいかないからという差別化の意図もあるのだろうけども。

 視点を次々にスイッチさせて物語を進行させていくのは前作と同じなんだけども、前作がわざと初めの内は意図が分からない場面を持ってきたりすることで、読者に思考させる感じで筋立てを用意していたのに対し、今回はチャチャを中心として、彼女を想う男達の姿を順に描いて物語を紡いでいる。
 これ、前作に比べれば凄く分かりやすいし読み取りやすいんだけど、その分読んでいて意外だと驚いたり泣いたりと心動かされる部分が小さくなってしまっている気がするのが気がかり。
 読んでいる時酒飲んでいたのもあったのかもしれないのだけど。
 ベネズエラ・ビター・マイ・スウィートの時は、○○が○○○する直前に最初の意図が分かって、まさか! と思った影響もあって、その後のあの人の覚悟に凄く心打たれたからなあ……

 色々と良くも悪くも変化している部分がある今作なんですが、やっぱり変わらないところもあるとも思う。
 それは例えば、残酷なまでに現実的で、奇跡なんて都合の良いものは起きない世界と、それでも戦え、と遠いところから聞こえてくる声援のような想いであったりします。
 この辺り、表現方法が前作に比べて盛り上がりにかける部分があって残念なんですが、こういう所、凄く好きです。

 結局、あのラストは人によっては納得できないという人もいるんじゃないかな、と思いますが、個人的に言えば私は凄く好きです。
 物語はそこで終わるかもしれないけれど、彼ら彼女らの人生は続く。
 大切なものは喪われてしまったかもしれないけれど、決してそこで終わりではないのだという声が聞こえてくるよう。

 第一、俺みたいな男が思う以上に、「女」、あるいは「女の子」って言うのは強いものなんじゃないかな、と思います。
 きっとこれから先も、この話の内容ほどハードな日々ではないにせよ、当事者達の心の中では同じくらい辛いことは沢山あると思いますが、チャチャならきっと、どんな困難もしなやかに越えて、惚れた男を捕まえられると思います。

 女の子は、男が思ってるほど可愛いものじゃないんじゃないの?
 そう思うと、笑いが出てきてしまう、そんな作品でした。
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