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とある飛空士への恋歌 [書籍感想]

 個人的評価:★★★★★(星五つ)


とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

  • 作者: 犬村 小六
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2009/02/19
  • メディア: 文庫



「これはきれいに飾り立てられた追放劇だ」
数万人もの市民に見送られ、盛大な出帆式典により旅立ちの時をむかえた空飛ぶ島、イスラ。
空の果てを見つけるため――その華やかな目的とは裏腹に、これは故郷に戻れる保証のない、あてのない旅。
式典を横目に飛空機エル・アルコンを操縦するカルエルは、6年前の「風の革命」によりすべてを失った元皇子。
彼の目線は、イスラ管区長となった「風の革命」の旗印、ニナ・ヴィエントに憎しみを持ってむけられていた……。
『とある飛空士への追憶』の世界を舞台に、恋と空戦の物語再び!!

 ……って、続きものかよっ!!

 今更ながら読了。
 ……しかし、前作の「とある飛空士への追憶」が一冊で完結してる話だったので、てっきりこれも一冊で終わるのだろうと思って読んでいたのですが、プロローグの旅立ちから、過去の話に移ってからがやたら長い。
 おいおい、もう半分すぎちゃったけど、これでまとめられるのか……とか思ってたら、続き物でした(苦笑
 あらすじにも続き物とは書いてないから、すっかり勘違いしてましたよorz

 物語の内容へと話を戻すと、「追憶」で分かっていたことだけど、この人の描く空というのは本当に凄い。
 人にはあまりに遠く広く、そこに至るまでに悲しみや憎しみが剥がれ落ちて透き通っていく様には畏れすら感じる。
 ミハエルとのあの空と、ヒロインとのあの雲の印象があまりにも鮮やかに心に残ります。

 でもまあそれとは別に、今回は随分と難しいキャラクターを主役に置いて来たなあ、というのも素直な感想。
 主人公のカルエル・アルバス君、ヘタレで生意気、しかも周囲の人間を侮蔑していると、かなり感情移入しにくい性格してます。
 読んでたら、テイルズオブジアビスの初期ルークを思い出しました(苦笑
 もちろん、最愛の母の遺したものと、革命後に引き取られることになったアルバス家との交流を経て、大分そうしたところは矯正されているのですが。

 ただまあこいつ、根っこの部分では全然変わってないんだよなあ。
 大切なものとそうでないものをはっきり分けて、そうでないものを侮蔑しているところは全く変わってないんですよね。
 皇子時代は母マリアだけが大切だったのに対し、今のカルエルにはアルバス家の人間が加わっただけ、という感じ。
 単なる一般人になった後でも相変わらず騎士身分の人間を見下しているし、自転車に乗っていることが気に食わないというだけでそのまま見過ごそうとしているし。
 母親を奪った革命の象徴としてのニナ・ヴィエントを盲目的に(といっていいと思う)憎んでいるのがその最たるものか。
 母親本人が憎まないで、といっているのに、見事にスルーしているのは感情として仕方のないことだとは思いますが。
 ただ、逆に言うと大切なものに対する姿勢は本当に純粋だから、悪いところばかりではないのだけど。
 いじめっ子とのケンカのところとか、ミハエルとのあの別離のところとか。
 特にミハエルとの別離は空のシーンに勝るとも劣らないくらいに心に響きました。
 ちょっと泣きそうだったかも。
 これがツンデレの破壊力というやつでしょうか。絶対違います。

 ちなみに、どうでもいいですがクレアの正体は読む前に目次のタイトルと人物紹介だけで分かった(笑
 明らかに隠すつもりのない話運びなので、別に自慢するようなことでもないですが。

 カルエル・アルバス、アリエル・アルバス、母マリアの言葉、ニナ・ヴィエント、クレア・クルス、そして母マリアの遺した言葉。
 この一巻目は物語の要素をまき終えた、という感じ。
 これからそれらがどのように絡み合っていくのか、非常に楽しみな作品です。
 やっぱり最大のキーはマリアの残した「許してあげなさい」という言葉だよなあ、などと思いつつ。
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